よくわからないこと 伊藤眞「改正民法下における債権者代位訴訟と詐害行為取消訴訟の手続法的考察」

・詐害行為取消訴訟の内容は給付訴訟と形成訴訟であり、これらの請求は単純併合の関係にある*1。そして、給付訴訟には債権者固有の直接請求権(424条の9)と債務者の返還請求権を代位行使するという2つの請求権が存在すると説明する。そして、直接請求権は債権者固有の請求権であるがゆえに、他の債権者は介入できないと説明する。

 しかし、債権者は受領しない可能性があることを理由に債権者に対する金銭や動産の引渡しを認めてきたはずである。改正法でこの法理が変わっていないのであれば、債権者固有の権利として直接請求権を考え、そうであるがゆえに他の債権者が介入できない、とするのはおかしいのではないか。

 

・債権者代位訴訟において、債務者は債権者代位訴訟に共同訴訟参加できる。債権者代位訴訟の債務者は判決効が及ぶし(民事訴訟法115条1項2号)、被代位債権の管理処分権もあるから当事者適格を失わないからである。ところが、実体法上、債務者が被代位債権を行使すると債権者は代位権を行使できないとされているので、債務者が共同訴訟参加により権利行使をしている場合、債権者代位訴訟は請求棄却判決をするべきであると論じている。

 ここがよくわからない。まず、債権者代位権の訴訟物は被代位債権である。しかし、ここで請求棄却判決がなされたとしても、被代位債権の不存在に既判力が及ぶとは考えられない。では訴訟要件と考えるべきか。これは債務者が被代位債権を行使すると債権者は代位権を行使できないという要件が実体法上の要件と考えていることと矛盾する。

 では、仮に実体法上の要件と考えた場合、債務者に請求認容判決、債権者に請求棄却判決をすることは可能なのだろうか。

 典型的には共同訴訟参加は類似必要的共同訴訟に後発的に参加する場合に用いられるイメージがある。類似必要的共同訴訟の場合、当事者の一方は全体として利益が共通しているものだとおもうが、この場合、債務者と債権者間で利害対立が発生しそうであるが、これは大丈夫なのだろうか。

 また、この判決が認められるということは、共同訴訟参加をするときに、債務者が新たに別個の請求(自己への履行請求など)を立てているということだと思われるが、共同訴訟参加のときにそのようなことをするのは可能なのだろうか。 

*1:なお、この考え方は通説ではなく、通説は詐害行為取消訴訟の訴訟物は詐害行為取消権そのものと考える。